レオどうぶつ病院腫瘍科ブログ

2017年8月26日 土曜日

リンパ腫に対する6か月間の化学療法を卒業した6歳のパグ     ペットのがん レオどうぶつ病院腫瘍科 横浜市青葉区


うめぼしちゃんは6歳、雄のパグ。1週間前に左あごの下に小豆台のしこりを見つけました。
昨夜、急速にしこりが増大して来院しました。
食欲はあるものの、いつもの元気はありません。

来院時、顔面は腫脹し、全身の体表リンパ節の腫大を認めました。最大の大きさの左下顎リンパ節はテニスボール大で、あご下の方に連なっていました。

リンパ節の細胞診では採取した細胞のほとんどが大型のリンパ芽球でした。最も腫脹していた左下顎リンパ節からは炎症細胞を認めました。
レントゲン検査では肝臓の腫大と腰下リンパ節群の腫脹を認めました。
血液検査では好中球増多とリンパ芽球を多数認めました。
これら所見を総合して多中心型リンパ腫ステージⅤbと診断し、化学療法(抗がん剤治療)を開始しました。

リンパ腫は血液系腫瘍であり、しこりがありますが外科手術は適応となりません。全身性疾患であるため化学療法(抗がん剤治療)が第一選択の治療となります。いくつかの抗がん剤を併用する多剤併用療法がおこなわれます。米国では各大学ごとにリンパ腫治療のプロトコールがあり、治療成績を競い合っています。その多くのプロトコールでは約半年間の治療を行います。基本的に使用する薬剤は同じですが使うタイミングなどがそれぞれ違います。当院ではそれらを加味して患動物のその時々の状態により治療を組み立てています。

うめぼしちゃんはリンパ腫に対する多剤併用療法の最も基本的なプロトコールであるCOP療法を行いました。多剤併用療法では副作用の異なる抗がん剤を併用することで、重度の副作用が出ないように分散しながら、リンパ腫に対しては色々な方向からやっつける、使いやすく効果的な治療法です。

治療当初に急速に腫瘍が縮み始めたことで一時具合が悪くなりました。これを急性腫瘍溶解症候群と呼んでいます。リンパ腫は小さくなっているのに、急速に壊れた腫瘍細胞の影響で調子が悪くなるのです。うめぼしちゃんは初回のビンクリスチン投与の翌日にリンパ節が急速に縮小したのに合わせて元気消失、食欲減退、嘔吐を認めました。点滴治療により元気が出て、食欲も戻りました。
その後の治療では体調を崩すこともなく、6か月間の治療を終了しました。

スッキリと小顔に戻ったうめぼしちゃん。
今後は定期検診体制でリンパ腫の再燃に備えます。

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