レオどうぶつ病院腫瘍科ブログ

2019年7月15日 月曜日

犬の全身に多発する脂腺腫瘍 体表腫瘍 外科切除        レオどうぶつ病院 腫瘍科


13歳のアメリカンコッカースパニエル。8年前に左上唇部にφ4mm大のしこりを発見しました。
体表にはイボ様のしこりが多発しており、経過観察を行いました。
左上唇部のしこりは増大して自壊・出血を繰り返し、6年前と3年前に結紮処置を行ています。
結紮後しこりは脱落して、しばらくは落ち着いていますが、徐々に再増大してきます。

今回は2ヵ月前より増大により自壊し、出血を繰り返していまいた。
今回は増大速度も比較的速く、しこり表面の崩れ方も強く悪性腫瘍の可能性も疑われます。
しこりは今までになく大きくφ2.4×1.8×1.0cmとなっていましたが底部組織への固着は認めず、外科切除を検討しました。

同時に左腋窩部に増大してきたφ3.2×2.8×2.2cm大の皮膚腫瘤と、左頬部のφ1.0cm大の腫瘤、そして左上眼瞼の自壊・出血を繰り返す小腫瘤の切除を行いました。



病理組織検査の結果はいずれも脂腺組織に由来する腫瘍性病変であり、多中心性脂腺腫・脂腺上皮腫と診断されました。
腫瘍の転移性は極めて低いものの、再発が多く診られる腫瘍であり、経過観察が必要です。

術後、出血はなくなり、生活の質の向上が認められました。

術後5ヵ月、術創も分からなくなりました。
先日、14歳のお誕生日を迎えました。

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2019年6月15日 土曜日

健康診断で見つかった肝臓腫瘤の摘出 肝臓に発生した形質細胞腫 腹腔内腫瘤破裂 髄外性形質細胞腫   レオどうぶつ病院 腫瘍科


13歳のゴールデンレトリーバー。フィラリア検査と同時に行った血液検査で軽度の貧血が見つかりました。
一般状態は良好ですが、毎年行っている血液検査の結果と比較して、貧血傾向が認められたのが気になりました。
その他の血液検査項目は腎臓も肝臓も正常範囲でした。血尿や、血便・タール状便など出血を疑う所見はありません。
そこで腹部エコー検査を行うと、腹腔内にφ7cm大の球形腫瘤を認めました。

腫瘤は脾臓と肝臓の先端に接していましたが、どちらにつながっているかは確定できませんでした。
いずれにしても腫瘤破裂による腹腔内出血の可能性がありました。

腹腔内腫瘤は悪性腫瘍の可能性もありますが、胸部X腺検査では現時点で肺転移を疑う所見はありません。腹部X線検査では胃の尾腹側に存在し、脾臓と肝臓の辺縁に接触していましたがどちらから発生しているかは断定できません。
肝臓腫瘍であった場合には血液検査の肝臓パネルが上昇しそうなものですが値は正常であり、脾臓の腫瘤破裂による腹腔内出血を第一に疑いました。たとえ肝臓から発生していた場合でも外科切除は可能であると判断し、腹腔内腫瘤摘出術を行うこととしました。

手術の目的はしこりが悪性腫瘍でも良性病変であっても、この後の再破裂による出血死を回避するのが第一の目的です。摘出した腫瘤を病理検査に出して結果により術後の補助療法など治療の作戦を立てるのが次の目的です。
術前の血液検査では貧血は改善傾向にあり、腫瘤からの出血は止まっているものと考えられましたが、腫瘤の自壊部と周囲組織との癒着も予想されました。

腹部正中を切開すると腫瘤が確認できました。まずは腫瘤周囲を慎重に触診すると、脾臓ではなく肝臓の辺縁より発生していることが分かりました。腫瘤の自壊部分には周囲の大網膜の癒着が認められました。まずは癒着部分を慎重に結紮離断していきました。

癒着部分が離断できると腫瘤を腹腔外に引き出し肝臓との付着部のチェックをしました。
腫瘤の基部は約4cm。肉眼上正常な肝臓の部分で切除しました。

切除した腫瘤は重さ139g。φ9×8×6cm大であり、術前の画像診断より増大していました。
後日、病理組織検査では血液系腫瘍(形質細胞腫瘍)疑いであり、後日免疫染色により髄外性骨髄腫と診断名がつきました。

同時に左大腿部に数年かけて増大した皮膚腫瘤も切除しました。
腫瘤内には膿汁が貯留し、病理組織検査では低悪性度の悪性毛包上皮腫と診断されました。

術後9日、抜糸に来院しました。元気も食欲もいつも通り。

骨髄に浸潤し全身症状を伴う形質細胞の腫瘍を多発性骨髄腫といい、抗がん剤治療が適応となります。
一方、皮膚などに限局した髄外性形質細胞腫は外科切除により治ることも多いのですが、形質細胞腫が肝臓に限局して大きなしこりを形成するタイプは調べる限り報告がなく、その予後は不明です。
今のところ多発性骨髄腫に随伴する高グロブリン血症や、それに起因する高カルシウム血症や腎不全、血球減少症、出血傾向などは認められません。
そこで皮膚などの髄外性形質細胞腫と同様に、術後化学療法は行わずに経過観察としました。

今回は、血液検査で貧血に気付いたことから腫瘍の発見に結びつきました。
軽度の貧血だったため、定期的に血液をチェックしていないとその変化に気付かなかったかもしれません。
また、健康診断にレントゲンやエコーなどの画像検査を組み込む必要性も実感しました。

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2019年3月19日 火曜日

血小板減少により鼻出血を認めた肝臓脾臓型リンパ腫の犬

13歳のミニチュアダックスが急に元気がなくなり、嘔吐と食欲低下を主訴に来院しました。 
血液検査より肝パネルの増高と炎症マーカーであるCRPの上昇、血小板減少を認めました。
レントゲン検査では肝臓と脾臓の腫大を認め、

エコー検査では肝臓と脾臓実質の模様の変化を認めました。

下痢と食欲廃絶のため点滴治療を行いましたが、入院中に鼻出血を認め、血小板が少ないために止血に苦労しました。

第4病日の血液検査では黄疸と血液凝固異常を認めDICの状態となり、2次診療の予約を取りながらもDICの治療とステロイドの投与を開始しました。
ステロイドを投与した夜より少しずつ食べ始めました。第8病日、2次診療施設にて肝脾型リンパ腫の疑いであり、予後不良であると診断されました。
このタイプのリンパ腫は治療反応に乏しいことが多いが、まれに効果があることもあるとのことでした。
診断日より可能性にかけた化学療法を開始しました。黄疸と血液凝固異常は徐々に改善し、DICの状態は脱しつつありましたが、好中球数の増高と急な低下を繰り返し、血小板減少に加え貧血も発現しました。状態は安定しませんでしたが、調子に合わせて使えそうな抗がん剤を選択して治療を継続しました。
治療開始から1ヶ月後、ほぼ寛解の状態となり体調も安定してきました。

肝臓・脾臓の腫大もなくなりスッキリとした体型に戻りました。

治療開始から間もなく6ヶ月。まもなく化学療法卒業の予定です。
難治性タイプであることから、徐々に治療の間隔を空けていくこととしました。

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2019年3月11日 月曜日

犬の大きな眼瞼腫瘍切除と眼瞼フラップ形成術          マイボーム腺癌


マイボーム腺腫は高齢犬の眼瞼部に比較的良く発生し、切除により治癒します。小さなマイボーム腺腫でも根の部分を残すと再発してきますので、突出した部分だけでなく根部を含めたくさび状切除を行ったりします。切除した眼瞼の辺縁をぴったり合わせて縫合するとキレイに仕上がります。

眼瞼の1/3を超える大きさの腫瘤になると、切除後にそのまま寄せて合わせると引き連れが生じて、眼の形が変形してしまいますので、眼瞼フラップ形成術を行うことがあります。


12歳のラブラドール・レトリーバー。3年前より左上眼瞼に腫瘤認め、増大とともに自壊や出血をするようになりました。その他、全身の皮膚にも難治性の化膿病変があります。高齢であることから普段は眼軟膏を塗ったりして対処して、増大出血した際には眼瞼突出部分の凝固や結紮処置を行いましたが、いったん突出部が取れても数ヶ月すると再び生えてくるのを繰り返しました。今回はかなり増大し、出血も止まりにくく腫瘤が悪性化している可能性も疑われます。高齢ではありますが手術を検討しました。

左上眼瞼の腫瘤は眼瞼縁周の1/3以上。眼瞼フラップ形成術を計画しました。

上眼瞼をめくると腫瘤の基部は裏側まで入り込んでいますので、表面の切除では取り切れません。

術前に切開予定線をマーキング。

眼瞼の腫瘤を切除し、皮弁(フラップ)を形成し、縫合しました。
上眼瞼の1/3以上切除しましたが、目は小さくならずに済みました。

同時に右肘に増大した皮膚腫瘤を切除しました。
術後の病理検査では、眼瞼腫瘤はマイボーム腺癌(悪性)、肘の腫瘤は血管腫(良性)と診断されました。

術後1ヶ月の様子。出血はなくなり、眼の形も良好です。
先日、13歳の誕生日を迎え、元気に過ごしています。

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2019年1月28日 月曜日

日本獣医がん学会(大阪)に参加してきました           犬と猫の肥満細胞腫 分子標的薬


昨日は休診させていただき、大阪で開催された日本獣医がん学会に参加してきました。

今回のメインテーマは肥満細胞腫。
犬や猫では最も多く遭遇する腫瘍のひとつですので、がん学会でも何年かに一度は特集を組まれます。

肥満細胞腫の治療は、切除が可能なら外科切除が第一選択の治療となるのは今も昔も変わりません。

今回は切除不能な肥満細胞腫や全身に播種する悪性度の高い肥満細胞腫に対する治療について、分子標的薬を含めた化学療法の最新情報をブラッシュアップしてきました。
明日からの診療に活かしたいと思います。

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