レオどうぶつ病院腫瘍科ブログ

2014年8月 8日 金曜日

足底部のカリフラワー状腫瘤を結紮処置によりQOLが向上。

6歳齢、雌のフェレットの左後肢、足底部に2か月前に腫瘤が発生し、増大と共に自壊し始めた。

腫瘤はメインパッドの隣に張り付くように存在し、表面は不整で自壊・出血があり、カリフラワー状に拡がっていますが、良く見るとその基部はくびれがあり細くなっているようでした。
症例は現在、他疾患の治療中であり、まずは対症的に無麻酔での結紮処置を行うことにしました。

結紮には手術用の絹糸を使用しました。フェレットは飼い主さんに抱いていただきながら結紮が終了すると、腫瘤は紫色に変色しました。しこりへの栄養血管を遮断することにより腫瘤は徐々にミイラ化して、うまくいくと1~2週間でポロリと脱落する予定です。

10日後、腫瘤が脱落しました。予想通り基部は細く、約2mmほどの痕跡がありました。

しこりがなくなり動きが良くなったということです。このようにしこりの基部がくびれており、良性のイボのような病変を疑う場合には結紮処置が有効です。

しこりが腫瘍の場合には脱落した基部より再発をしますので、若い動物であれば外科的に完全切除することが望ましいと考えられます。高齢の動物や、基礎疾患により麻酔のリスクがある場合には、結紮処置は有効な治療法かもしれません。

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2014年7月27日 日曜日

精巣腫瘍を放置すると雌性化や貧血、リンパ節転移することも

左右の睾丸の大きさが違う。片方がだんだん大きくなってきた。
それは精巣腫瘍かもしれません。

精巣腫瘍は未去勢のオス犬では最も発生率の高い腫瘍のひとつです。
早期に摘出手術を行えば完治する可能性が高い腫瘍ですが、放置して進行すると命取りになることもあり注意が必要です。
精巣はお腹の中で発生し、生後間もなく内股の辺りの鼠径管を通ってお腹の外に出て、陰嚢内に治まります。その途中で引っかかって陰嚢まで降りてこれない精巣を停留精巣または陰睾と言います。
停留精巣の場合、精巣が腫瘍化する確率が上がりますので早目に去勢手術を検討することが重要です。特に腹腔内精巣の場合腫瘍化して大きくなった精巣が見えないため手遅れになることがあるのです。

通常の左右とも陰嚢に収まった精巣では、陰嚢近くの一か所の切開部位から両側とも摘出します。
鼠径部停留精巣の犬の写真です。陰嚢内には精巣は一つしかなく、右の内股の辺りが膨らんでいるのが分かります。
鼠径部(そけいぶ)停留精巣では2か所の術創となります。


摘出した精巣は既に左右の大きさに違いがあるのが分かります。

陰嚢内にひとつしか精巣がなくて、内股の部分(鼠径部)にもなさそうな場合、おそらく腹腔内に精巣が残っています。
小さな精巣では画像検査で確認することは難しく、開腹して探します。
写真は生後7ヶ月で去勢手術を行う際に片側の精巣が見つからず、開腹して腹腔内から取り出した精巣です。

このまま放置していたら、いずれ腫瘍化していたことでしょう。

多くの精巣腫瘍は摘出術により完治しますが、セルトリー細胞腫などでは放置すると腫瘍からの女性ホルモン(エストロジェン)の分泌により雌性化が起こったり、非再生性の貧血を引き起こします。また、進行するとお腹の中の腰窩リンパ節転移、さらには遠隔転移も起こるので要注意です。

写真の犬は鼠径部の停留精巣が腫瘍化し急速に増大してきました。
雄犬ですが乳房が腫大したり、包皮が下垂したり雌性化が認められました。

重度の心臓病を抱えた高齢犬であるため手術は出来ず、残念ながら貧血が進行して亡くなりました。

健康診断で腹腔内にしこりが見つかった犬です。超音波画像では黒く見える膀胱の隣に8㎝大の大きなしこりが確認されました。去勢手術は子犬の頃に行っていましたが、片方しか精巣がなかったとの事でした。

摘出手術の結果、取り出したしこりは腫瘍化した腹腔内精巣でした。


腫瘍は摘出できましたが、その後腹腔内のリンパ節に転移が認められました。
放射線療法を行いましたが増大を止められずに亡くなりました。

停留精巣が疑われる場合には早めに摘出しておくことが重要です。

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2014年7月12日 土曜日

切除困難な犬の肥満細胞腫グレードⅡへのイマチニブの効果


11歳の柴犬 オス(去勢済み)
3年前に左眼の結膜炎に気付いた。左眼外眼角の結膜は充血し腫脹していた。抗生物質とステロイドの合剤である眼軟膏の塗布で改善傾向が見られた。その後も時々同部位が腫れることがあり、同様に眼軟膏の塗布で改善していた。

発見から約1年が過ぎたころにはしこりはφ0.7cm大で、眼軟膏を付けても縮小しなくなっていた。時々引っ掻いて出血することもあり、外科切除をすることにした。

術後の経過は良好であったが、病理検査結果は肥満細胞腫グレードⅡであった。検査結果のコメントを見ると悪性度が強くグレードⅢに近いと記載されていた。
犬の肥満細胞腫はすべて悪性であるが、悪性度(グレード)がⅠ~Ⅲに分類されている。比較的悪性度の低いグレードⅠでは外科切除により完治する可能性もあるが、グレードⅡでは再発率は44%。4年生存率は45%と報告されている。グレードⅢに近い本例では予後は更に悪い事が予想された。


術後2週間目に抜糸をした。創はきれいに癒合していたが、残存する腫瘍細胞から早期に再発してくることが予想された。眼球摘出を含む拡大切除も選択肢としてお勧めしたが、希望により術後の補助的化学療法を行うこととした。


術後4週目には術創部は分からないほどに落ち着き、再発も認めなかった。
犬の肥満細胞腫で標準的なビンブラスチンとプレドニゾロンによる化学療法を6カ月間行った。
治療中は再発を認めず、問題となる様な副作用も起こらなかった。

術後8カ月半で同じ部位に局所再発を認める。腫瘤は眼結膜だけでなく外眼角皮膚面にも存在していた。

再びステロイドの眼軟膏を使用したが増大傾向が認められ、手術から1年経った時点で分子標的療法を試すこととした。

一部の肥満細胞腫においてc-KIT遺伝子に変異が認められる。変異の認められる肥満細胞腫に対して分子標的薬であるイマチニブが効果を示す。遺伝子の変異が認められる割合はグレード(悪性度)が増すほど高く、今回はグレードⅢに近いグレードⅡということで期待が持てた。

分子標的薬であるイマチニブの治療を開始し、1週後には目やにが軽減し、2週後には肥満細胞腫の縮小を認めた。分子標的療法開始より1ヶ月後にはしこりは分からない程度に縮小した。その間に嘔吐などの副作用はなく血液検査での変化も認めなかった。

その後イマチニブの投与を1日おきとして継続した。分子標的療法開始5カ月目にはイマチニブの投与を3日に一度とした。しこりを発見してから3年、肥満細胞腫切除手術後1年9カ月、分子標的療法開始より9カ月現在、一般状態良好で肥満細胞腫は肉眼上確認しない。現在も4日に一度イマチニブの投与を継続している。

切除困難な広範囲の肥満細胞腫や、今まで長期維持が困難であったグレードⅡやⅢの肥満細胞腫でも分子標的薬により制御できる可能性がある。

分子標的療法は次世代の化学療法として人でも期待されている治療であり、犬では現在のところ肥満細胞腫、GISTなどでのイマチニブの効果が報告されている。

細胞の腫瘍化、増殖には分子レベルでの遺伝子異常が関連している。分子標的療法は変異を起こした分子をターゲットに作用する薬であるために、従来の抗がん剤に比べ効果が高く副作用が少ないのが特徴である。しかし、特定部位に変異が起こってない腫瘍には効果はなく、薬の値段が高い事が難点である。


本日、ワクチン接種に来院しました。調子良好です。

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2014年7月 1日 火曜日

汗腺嚢胞が長期の経過を経て腫瘍化した犬の1例


5歳齢、雄のウェルシュ・コーギーが腰部のしこりを主訴に来院した。しこりは左側腰背部皮下にφ2.6×2.3cmで存在していた。
細胞診を行うと内部から透明な液体が排出ししこりは消失した。吸引した液体には細胞成分は少なく、悪性所見は認めなかった。その後、増大を繰り返しその都度吸引排出を繰り返して維持していた。


治療開始より2年8カ月経ち、再びしこりの増大を認め、吸引処置を行ったが少量しか吸引できず、エコー検査では内部が多嚢胞状に変化している事を確認した。細胞診では炎症細胞と共に一部に細胞集塊を認めた。細胞に明らかな悪性所見は認められなかったが、外科的に切除をすることにした。




病理検査の結果は汗腺腺腫。汗腺の過形成病変が時間をかけて腫瘍に移行したものと診断された。切除後の経過は良好である。

先日、ワクチン接種に来院されました。

術後2カ月半が経ち、発毛して傷がどこだったか分かりにくくなっていました。繰り返していたしこりの再増大はなく、経過良好です。

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2014年6月24日 火曜日

細胞診や増大傾向だけでは分からない犬の乳腺腫瘍の良悪

症例① トイ・プードル  10歳 未避妊雌(出産歴あり)

4年前に発見したφ0.4㎝に乳腺部のしこりが徐々に増大。3か月前に急速増大し外科切除をお勧めしたが、しこりの内部に貯留した液体の吸引除去により軽度縮小し、貯留液の細胞診では乳腺炎を疑う所見があったため抗生剤の投与を行った。

その後も増大しては吸引除去を繰り返していたが、徐々にしこりが吸引除去できない内容に変化してきた。いずれにせよこのまま増大を続ければしこりの自壊から生活の質は落ちることが予想され、外科切除に踏み切った。

乳腺部には右側第3乳腺部φ1.4×0.9㎝と右側第4‐5乳腺部にφ5.8×3.8×3.3㎝の巨大な腫瘤が存在していた。術前の画像検査からは転移を疑う所見は認めなかった。悪性ならば進行度はT3N0M0ステージⅢの乳腺腫瘍を疑い、右側第3‐5乳腺切除とソケイリンパ節廓清を行った。



病理組織検査の結果はいずれも良性乳腺混合腫瘍であり、手術にて完治した。


症例② ミニチュア・ダックスフント  6歳 未避妊雌
10ヶ月前にφ0.9㎝大の乳腺部のしこりを発見した。細胞診にて上皮系細胞集塊を認め乳腺腫瘍を疑った。しばらく増大は認められなかったが、2か月前より増大傾向を認めたため外科切除をお勧めした。

腫瘤は右側第2乳腺部皮下に遊離して存在しφ1.3×1.2×1.0㎝大に増大していた。領域リンパ節や肺には転移を疑う所見はなく、悪性ならば進行度はT1N0M0ステージⅠの乳腺腫瘍を疑い、右側第2乳腺部分房切除術と同時に今後の残存乳腺組織への新病変発生のリスクを下げる目的で卵巣子宮摘出術を行った。


病理検査の結果は悪性乳腺混合腫瘍であり、初期の段階での完全切除により根治の可能性もあり経過観察中である。


犬の乳腺腫瘍では良性であっても炎症を伴う場合や乳汁など液体の貯留がある場合には急速増大が認められる。一方、細胞診で明らかな悪性所見がなく比較的ゆっくりとした増大を認める場合でも今回のように悪性腫瘍のことがあり注意が必要である。

乳腺腫瘍を疑う場合には増大傾向や細胞診を含めた総合的な臨床所見から適切な手術時期を見極めること。進行度や年齢、基礎疾患の有無などから的確な手術目的の設定と術式の決定が大切である。

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