d.頭頸部の腫瘍

2022年2月28日 月曜日

パラディア投与により縮小した口腔内悪性腫瘍のミニチュアダックス 分子標的療法 トセラニブ


13歳雄のミニチュアダックスが口腔内に急速増大するしこりの相談に来院しました。

2ヵ月前より口臭が強くなり、左の下顎にアワビのような大きなしこりを見つけたとのことでした。
他院にて細胞診を行い、口腔内悪性腫瘍が疑われました。
飼い主さんの希望は、大がかりな外科手術や放射線療法ではなく、残りの期間を痛みや苦しみなく生きて欲しいと望まれ、緩和治療をご希望なさっています。

初診時、左下顎の奥歯の歯肉部にφ4×2×2cm大の腫瘤を確認しました。腫瘤は自壊し、膿様の唾液で口臭が強く、出血しやすい状態でした。
治療の選択肢として1.分子標的薬による化学療法、2.メトロノミック化学療法、3.インターフェロン療法、4.非ステロイド消炎鎮痛剤を提示しました。

相談の結果、その中から、副作用の少なそうな治療として、インターフェロン療法と非ステロイド消炎鎮痛剤を試すこととなりました。
治療は犬アトピー性皮膚炎治療に使用する犬インターフェロン製剤「インタードッグ」を週に一回注射しました。非ステロイド消炎鎮痛剤は1日1回投薬しました。

治療により調子を落とすことはありませんでしたが、腫瘍は徐々に増大し、インターフェロンに腫瘍の縮小効果は認めませんでした。
腫瘍の増大により腫瘍表面は自壊し、一部壊死して引っ掻いて出血をするようになり、生活の質が落ちてきました。

しかし、まだ遠隔転移を疑う所見はなく、可能性にかけて分子標的薬「パラディア」の投与をすることにしました。
「パラディア」は難治性の犬肥満細胞腫の治療薬であり、効能外使用であることをご了承いただきました。
治療目的が、生活の質を落とさないことであるため、副作用を出さないように低用量で週に3回の投薬を開始しました。


開始して1週間後には縮小し始め、2週後には明らかに小さくなり、食べる速度も速くなりました。
しこりは小さくなったものの、少し元気がないとのことで飼い主さんの判断でしばらく休薬しました。



「パラディア」開始から2ヵ月、外見上はしこりの存在が分からない程縮小しました。

口を開けると腫瘍は存在していますが、食べにくい様子もなく出血もありません。
現在は週に3回の「パラディア」投薬を、週に1回に減薬して再開しています。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL