m.腫瘍外科

2016年9月 7日 水曜日

三年かけて増数増大した犬の乳腺腫瘍 レオどうぶつ病院腫瘍科 青葉区 桂台 桜台 みたけ台 たちばな台

10歳のミニチュアダックスの女の子。

3年前に乳腺部にφ1‐2㎜の小さなしこりを二つ発見しました。
2年前には3カ所に増え、大きさも最大のものでφ1㎝に増大しました。
その後、いくつかの病院で乳腺腫瘍の切除手術を勧められましたが、怖くなりそのままになっていました。

当院初診時、最大のしこりはφ4㎝。左右両側の乳腺全域に9カ所のしこりが散在していました。

飼い主さんの心配は手術の痛み、麻酔のリスク、何よりこの子は入院することは無理だろうとの事でした。
そこで、乳腺腫瘍について詳しく説明を行いました。

犬の乳腺腫瘍の良悪比率は約50%であり、複数個あるしこりの半分はがんの可能性もあるということ。
この3年間で進行し、大きさでいうとステージⅡであり、転移をするリスクが高まっていること。
肺に転移をしてしまったら、手術で治すことは難しいこと。

お話をしているうちに飼い主さんの心配事は、早くしないと手術の機を逸してしまい、命を落とす可能性がある事に変わっていました。

次に手術方法を検討しました。
この数年間で大きさの変化だけでなくしこりの数も増えてきているので同時に卵巣摘出術もおこなった方が良いと判断しました
。毎回の発情後には偽妊娠が認められ、ホルモン分泌異常も腫瘍の増数増大に関連していることが疑われます。

両側の乳腺組織全域にしこりが散在していることから手術は2回に分けて、初回手術では最大のしこりを含む右側乳腺全切除とリンパ節郭清、卵巣子宮摘出術を計画しました。

痛みに関してはモルヒネの注射とフェンタニルパッチを使用して対応することとしました。

入院に関してリスクは伴いますが、回復状態によっては早めに退院して通院で対応する選択肢も提示しました。

術前の血液検査では異常はなく、触診とレントゲン検査ではリンパ節の腫大はなく、肺転移を疑う所見もありませんでした。
そこで腫瘍の進行度はT2N0M0ステージⅡの乳腺腫瘍の疑いで手術を行いました。






フェンタニルパッチにより痛みが緩和されたためか、手術当日の夜から食事も食べました。
心配していた入院も落ち着いて過ごせ、4日間の入院後に退院しました。


病理検査の結果は最大のしこりを含め、いずれも良性で乳腺腺腫、良性乳腺混合腫瘍と診断されました。
1か月後に反対側の乳腺腫瘍の手術予定を行う予定としました。

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2015年1月 6日 火曜日

断脚手術から1年 線維肉腫を克服したエルザちゃん 青葉区


右前肢に発生した線維肉腫を断脚手術により克服したゴールデン・レトリバーのエルザちゃん。
ご家族と共にシンガポールに移り、間もなく術後1年。
一年中暖かい現地より元気なお便りが届きました。
大好きなスイカが嬉しくって走ってます。

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2014年12月29日 月曜日

切除によりQOLの改善した犬の肝臓に発生した巨大腫瘍

16歳の犬が2週間前より食欲低下により動物病院受診し、腹腔内巨大腫瘤の存在を指摘された。

手術は不能とのことで光線温熱療法を希望して当院に来院された。
初診時、レントゲン検査でバリウム造影により消化管をマーキングすると、腫瘤は胃を頭背側に腸管を尾背側に圧迫して存在していた。

エコー検査ではφ11cm大の腫瘤はほぼ全周を確認できたが脾臓との連続はなく、肝臓の腫瘤が疑われた。
この1週間で腫瘤による消化管の圧迫からか食欲が廃絶していた。
光線温熱療法をご希望であったが効果が現れるまでの時間的な余裕はなく、リスクは伴うが可能性に賭けた腫瘤摘出術をお勧めした。何とか摘出が可能であった場合には圧迫が解除されQOL(生活の質)の改善が期待された。
利点、欠点を検討された結果、オーナーの希望により当院で肝臓腫瘤摘出手術を実施した。当日は獣医腫瘍外科医の林先生を招いて行った。

お腹はパンパンに張り、今にも弾けそうだ。少しの衝撃でも肝臓腫瘤の破裂の危険性があった。

開腹するとすぐに腫瘤が現れた。多数の嚢胞からなる腫瘤の破裂がすでにいくつもあり、周囲の膜組織との癒着が認められた。
癒着を慎重に剝離していくと腫瘤の基部は細くなっており、肝臓の内側左葉に連続しているのが確認できた。

腫瘤基部の正常に見える肝臓部分で結紮し離断した。
手術での大きな出血もなかったが、術後しばらくは貧血が徐々に進み、なかなか炎症も治まらなかった。

術後10日で退院し、少しずつ食欲が戻ってきた。
病理組織検査の結果は非上皮性悪性腫瘍であった。

術後2週間で抜糸をした。お腹はすっきりして食欲は戻りつつあった。
炎症も落ち着き始め、貧血も徐々に改善してきた。

術後2カ月の検診時には食欲も元気も戻り、転移を疑う所見も認めなかった。

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2014年6月13日 金曜日

断脚手術を乗り越えて~犬の手根部に発生した線維肉腫

エルザちゃんの左前肢手根部に発生したしこりは急速に増大しました。

部分的な組織検査の結果は線維肉腫。
可能性に掛けて切除手術に挑みましたが、腫瘍は底部の筋肉や腱、神経や血管を巻き込んでいて残念ながら切除不能でした。

高齢になったエルザちゃんを今後どうするべきか飼い主さんと共に悩みました。断脚手術をすれば、がんは治る可能性もあるが術後の介護が必要になるのか。放射線療法ならば根治は期待できないが一時的にでも腫瘍の勢いを抑えて、余生は前肢を温存して過ごすか。考えている間にも腫瘍は増大を続け、遠隔転移のリスクも上がってきます。

しばらくして、飼い主さんが断脚手術を希望して再来院しました。たとえ寝たきりになっても最後まで介護する。飼い主さんには強い信念がありました。実はご主人の海外転勤を直前に控え、がんを乗り切って一緒に連れて行きたいという考えがあったのです。

断脚手術は無事成功。術後しばらくは自由に動けない時期もありましたが、日に日に元気を取り戻していく姿は、産まれたばかりの子犬が立ち上がって歩き方を覚えて行く姿のようだったそうです。今では名前を呼ぶとすくっと立ち上がり、散歩でも引っ張って行くほどに改善しました。寝たきり介護の心配はいらないようです。今後は関節の負担を考えて、さらにダイエットに励みます。

今日は初めてのグルーミング。リボンを付けてもらって、いつもの家でのシャンプーとはちょっと違います。

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