a.皮膚の腫瘍

2017年2月22日 水曜日

高齢犬の肘の座りダコ部に発生した悪性腫瘍  ペットのがん   青葉区 奈良 緑山 すみよし台 三輪緑山



16歳の雑種犬。右肘にできた座りダコを一週間前から舐めて自壊し出血していると来院しました。

右肘にφ2.6㎝大のしこりがあり、表面は潰瘍状に自壊していました。消毒をして包帯で舐めないようにガードして、抗生剤、消炎鎮痛剤等の内科治療を行いました。高齢なこともあり、オーナーは何とか内科的に維持したいと希望されました。

5日ほど内服を行うと、ひどい下痢になり、抗生剤を休止しました。右ひじのしこりはφ3.1㎝大に増大し、自壊は改善しませんでした。触診上は底部の肘関節部との固着はありません。増大傾向からはただの座りダコではなく悪性腫瘍の可能性もあります。また、内科的には改善せずに悪化傾向にありますので、この先、生活の質がさらに落ちていくことが予想されます。
そこで、高齢ではありますが、外科手術を検討することにしました。
術前の血液検査では明らかな異常は認められませんでした。肺にも転移を疑う所見はありません。
全身麻酔下にて肘の機能障害が出ない範囲でのしこりの除去を行いました。


術後は安静を指示しましたが、肘は動く部分なので創の離開や癒合不全の多い場所です。
肘まで覆う術後衣を作成し、抜糸までの期間を長く持つことで無事に癒合しました。


病理組織検査の結果は汗腺腺癌と診断されました。腫瘍の発生には年齢的な問題と座りダコができる肘への慢性的な刺激が関連しているのかもしれません。

術後2か月の健診では毛も生えてきて傷も分かりにくくなりました。再発は認めず肘の動きも良好です。

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2017年2月 7日 火曜日

犬の肛門周囲に発生した扁平上皮癌と肛門周囲腺腫        レオどうぶつ病院腫瘍科 青葉区 松風台 桂台 若草台


12歳齢、雄のペキニーズ。

4か月前に肛門左側に小さなしこりを発見しました。しこりは徐々に大きくなり本人も気にしてお尻をこするようになりました。
初診時、しこりの大きさはφ4.6×3.6×3.4㎝。
排便に時間がかかるとのことでしたが、直腸検査ではしこりによる直腸の圧迫はなく、腰窩リンパ節群の腫大はありません。しこりからの細胞診では細胞崩壊物が採取されました。
細胞診からは悪性の所見はありませんが、腫瘍の可能性は否定できません。しこりが悪性でなくても、このまま増大すれば自壊して生活の質が落ちることが予想されます。
そこで検査と治療を兼ねた切除生検手術をお勧めしました。
その後、しこりが自壊したため抗生剤による内科療法を行いました。
一時的に落ち着くものの自壊・排膿を繰り返し、いよいよ手術を検討しました。

初診より3か月、てんかんを疑う神経症状を観察しました。また、弁膜症を疑う心雑音も聴取しました。
しこりは自壊を繰り返しながらもφ2㎝大に縮小していました。そのしこりとは別に、肛門の周りに複数の肛門周囲腺腫を疑うしこりを新たに観察しました。
麻酔のリスクはあるものの、根本的な治療である手術に向けて心臓病の治療薬を開始しました。

初診より6か月、心臓病薬の投与により、横になってよく眠れるようになった。てんかんを疑う発作は観察されず、手術を行うこととしました。

手術は肛門左側のしこりの摘出を行いました。


散在する肛門周囲腺腫を疑うしこりに関しては去勢手術を行うこととしました。

術後、病理検査の結果は肛門左側のしこりは低悪性度の扁平上皮癌と診断されました。
また、精巣も腫瘍化しており、間細胞腫と診断されました。

その後、去勢手術の効果で肛門周囲に散在していた肛門周囲腺腫は縮小してきました。


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