m.腫瘍外科

2017年4月 5日 水曜日

犬の脾臓巨大腫瘤破裂の緊急摘出術 レオどうぶつ病院腫瘍科   若草台 桂台 たちばな台 桜台 


9歳齢雄のビーグルが昨夜から元気も食欲もなく、震えていると来院しました。
診察では腰を丸めた姿勢で腹部に圧痛を認めました。
約一年前に急性膵炎となり、以来低脂肪食の食事療法を継続していました。
血液検査を行うと膵酵素のリパーゼと炎症の指標であるCRPの著増を認めました。
急性膵炎の再発を疑い、点滴治療を開始し、痛み緩和にフェンタニルパッチを貼って強力な鎮痛を行ないました。

翌日、レントゲン検査により腹腔内巨大腫瘤の存在を確認しました。
腫瘤はφ14×11×10㎝で腸管を背側、左側に圧迫し脾臓の腫瘤を疑いました。


超音波検査では脾臓腫瘤の周囲に液体貯留を認め、腫瘤からの腹腔内出血を疑いました。
昨日35%だった血液の濃度が26%となっており、持続的な出血により数日内に出血死することが予想され、緊急手術を行ないました。




術前の様子。腹部が腫脹しているのは太っているからではなかったのです。


摘出した脾臓。水色の線の部分に大きなしこりが発生しており、破裂して持続的に出血していました。
巨大なしこりはもろい組織で、摘出の際にちぎれて更なる出血が予想されたために、先に脾臓への血流を遮断してから摘出を行ないました。


脾臓辺縁から発生していたしこりは500gでした。
表面には腹膜組織が癒着し、出血を繰り返していたことが予想されました。

その後、貧血の改善と共に元気を取り戻しました。
リパーゼやCRPも正常化し、脾臓腫瘤破裂による二次的な膵炎であったことが予想されました。
病理検査の結果は過形成性結節であり、良性病変であったために完治しました。

本当はこんなにスマートだったのですね。

脾臓に発生するしこりには血管肉腫など非常に悪性度の高い腫瘍が多いのですが、良性病変であってもこのように大きなしこりを形成し、破裂して腹腔内出血をすることで命を落とす危険があります。また、術前にはそのしこりが血管肉腫などの悪性腫瘍なのか、今回のような良性病変であるかは画像では判別できません。



投稿者 レオどうぶつ病院

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