p.その他の治療法

2016年12月23日 金曜日

口腔悪性黒色腫 ペットのがん 青葉区 緑区 麻生区


14歳のゴールデン・レトリーバーが左下口唇部のしこりを主訴に来院しました。
高齢のため、全身麻酔をかけての積極的な治療は希望されず、細胞診をご希望されました。


腫瘤は左側下唇粘膜部にΦ1.6×1.2×1.0cm大で存在し、表層は一部自壊し出血していました。

細針吸引細胞診を行うと、一部に黒色の顆粒を細胞質に含む細胞を多数採取しました。
発生状況と細胞診の結果から口腔内悪性黒色腫と暫定診断しました。
胸部レントゲン検査では明らかな肺転移の所見は認められませんでした。

治療の選択肢として
外科療法
放射線療法
化学療法
光線温熱療法
インターフェロン療法
それらの組み合わせなどを提示しました。
オーナーは高齢である愛犬の状態を考えながら、しばらく検討されることとなりました。


1ヶ月後の再診時、腫瘤はφ2.2cm×1.4cm×1.1cmと増大傾向が認められました。

オーナーはインターフェロン療法を希望されました。
通院頻度と費用面から今回は腫瘤周囲の粘膜に塗布するタイプのイヌインターフェロンα製剤を選択しました。
治療は3日に一度、1カ月間を1クールとしました。


インターフェロン療法開始1ヶ月後、腫瘤はφ3.0×1.7×1.3cmに増大しましたが、腫瘤表面からの出血は治まったため治療を継続しました。

インターフェロン療法開始2カ月目には来院はありませんでしたが、腫瘤は軽度増大し、時々出血もあるとの事でしたがオーナーの希望により治療続行しました。

治療開始から2カ月半を過ぎた頃より、腫瘤は硬くなり、出血することが無くなったとの事でした。

治療開始から3カ月目に来院した時には腫瘤は縮小し、Φ0.6cm大の痕跡程度となっていました。



治療開始から7ヶ月。腫瘤は縮小していました。
足腰が弱くなり、起き上がりに時間がかかりますが、15歳を迎える事ができました。

インターフェロンはウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種であり、ヒトでは悪性腫瘍に対する抗がん剤として用いられています。
犬や猫においてもネコインターフェロンω製剤やイヌインターフェロンγ製剤の注射を使用した、いくつかの腫瘍に対する治療報告があります。
今回はヒトでいくつかの腫瘍の治療に使用されるインターフェロンαを治療に使用しましたが、今回使用したイヌインターフェロンα製剤は犬の歯肉炎に対し、歯肉に擦り込むことで局所免疫を賦活し歯肉炎を改善する薬であり、悪性腫瘍に対する効果の報告は今のところ一切ありません。

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2014年9月30日 火曜日

血便を繰り返すミニチュアダックスの直腸ポリープ

17歳齢、雄のミニチュアダックスが1か月前より時々便に鮮血が付着すると来院した。
最近になり下血の量や回数が増えて元気や食欲がなくなったとのことだった。

直腸検査を行うと肛門から約6cm入った直腸に狭窄部位を認めた。検査に使用したグローブには少量の鮮血が付着した。

直腸がんの可能性もあるが、高齢のため積極的な外科治療などは希望はない。
そこで今回はミニチュアダックスに多い直腸の炎症性ポリープの可能性も考慮して消炎鎮痛剤であるピロキシカムを処方した。

ピロキシカムを服用し始めて4回目の投薬時には血便が軽減し、元気になってきた。食欲が増して体重の増加が認められた。服用2週間目の診察では体重が増えすぎて食事量を制限しているとの事だった。直腸検査では前回認められた狭窄の軽減を認めた。有形便の表面に少量の鮮血が付着することもあるが、オーナーはQOL(生活の質)の劇的な改善に大変満足され、治療を継続している。

ミニチュアダックスの飼育頭数の多い日本では、ミニチュアダックスの結腸直腸に炎症性ポリープが多発することが報告されている。これらは粘膜の潰瘍化と出血を起こす。治療には外科療法の他にステロイドや非ステロイド系消炎鎮痛剤、免疫を調整する薬等の効果が報告されている。

ピロキシカムは非ステロイド系消炎鎮痛剤であり、消炎効果のみならず膀胱移行上皮癌を始め多くのがんの増殖抑制効果も認められる薬である。今回はピロキシカム単独の治療に非常に良く反応した。長期継続には胃潰瘍の発現や腎機能の低下などに気を付ける必要がある。

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2014年8月 8日 金曜日

足底部のカリフラワー状腫瘤を結紮処置によりQOLが向上。

6歳齢、雌のフェレットの左後肢、足底部に2か月前に腫瘤が発生し、増大と共に自壊し始めた。

腫瘤はメインパッドの隣に張り付くように存在し、表面は不整で自壊・出血があり、カリフラワー状に拡がっていますが、良く見るとその基部はくびれがあり細くなっているようでした。
症例は現在、他疾患の治療中であり、まずは対症的に無麻酔での結紮処置を行うことにしました。

結紮には手術用の絹糸を使用しました。フェレットは飼い主さんに抱いていただきながら結紮が終了すると、腫瘤は紫色に変色しました。しこりへの栄養血管を遮断することにより腫瘤は徐々にミイラ化して、うまくいくと1~2週間でポロリと脱落する予定です。

10日後、腫瘤が脱落しました。予想通り基部は細く、約2mmほどの痕跡がありました。

しこりがなくなり動きが良くなったということです。このようにしこりの基部がくびれており、良性のイボのような病変を疑う場合には結紮処置が有効です。

しこりが腫瘍の場合には脱落した基部より再発をしますので、若い動物であれば外科的に完全切除することが望ましいと考えられます。高齢の動物や、基礎疾患により麻酔のリスクがある場合には、結紮処置は有効な治療法かもしれません。

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