i.造血器系腫瘍

2019年6月15日 土曜日

健康診断で見つかった肝臓腫瘤の摘出 肝臓に発生した形質細胞腫 腹腔内腫瘤破裂 髄外性形質細胞腫   レオどうぶつ病院 腫瘍科


13歳のゴールデンレトリーバー。フィラリア検査と同時に行った血液検査で軽度の貧血が見つかりました。
一般状態は良好ですが、毎年行っている血液検査の結果と比較して、貧血傾向が認められたのが気になりました。
その他の血液検査項目は腎臓も肝臓も正常範囲でした。血尿や、血便・タール状便など出血を疑う所見はありません。
そこで腹部エコー検査を行うと、腹腔内にφ7cm大の球形腫瘤を認めました。

腫瘤は脾臓と肝臓の先端に接していましたが、どちらにつながっているかは確定できませんでした。
いずれにしても腫瘤破裂による腹腔内出血の可能性がありました。

腹腔内腫瘤は悪性腫瘍の可能性もありますが、胸部X腺検査では現時点で肺転移を疑う所見はありません。腹部X線検査では胃の尾腹側に存在し、脾臓と肝臓の辺縁に接触していましたがどちらから発生しているかは断定できません。
肝臓腫瘍であった場合には血液検査の肝臓パネルが上昇しそうなものですが値は正常であり、脾臓の腫瘤破裂による腹腔内出血を第一に疑いました。たとえ肝臓から発生していた場合でも外科切除は可能であると判断し、腹腔内腫瘤摘出術を行うこととしました。

手術の目的はしこりが悪性腫瘍でも良性病変であっても、この後の再破裂による出血死を回避するのが第一の目的です。摘出した腫瘤を病理検査に出して結果により術後の補助療法など治療の作戦を立てるのが次の目的です。
術前の血液検査では貧血は改善傾向にあり、腫瘤からの出血は止まっているものと考えられましたが、腫瘤の自壊部と周囲組織との癒着も予想されました。

腹部正中を切開すると腫瘤が確認できました。まずは腫瘤周囲を慎重に触診すると、脾臓ではなく肝臓の辺縁より発生していることが分かりました。腫瘤の自壊部分には周囲の大網膜の癒着が認められました。まずは癒着部分を慎重に結紮離断していきました。

癒着部分が離断できると腫瘤を腹腔外に引き出し肝臓との付着部のチェックをしました。
腫瘤の基部は約4cm。肉眼上正常な肝臓の部分で切除しました。

切除した腫瘤は重さ139g。φ9×8×6cm大であり、術前の画像診断より増大していました。
後日、病理組織検査では血液系腫瘍(形質細胞腫瘍)疑いであり、後日免疫染色により髄外性骨髄腫と診断名がつきました。

同時に左大腿部に数年かけて増大した皮膚腫瘤も切除しました。
腫瘤内には膿汁が貯留し、病理組織検査では低悪性度の悪性毛包上皮腫と診断されました。

術後9日、抜糸に来院しました。元気も食欲もいつも通り。

骨髄に浸潤し全身症状を伴う形質細胞の腫瘍を多発性骨髄腫といい、抗がん剤治療が適応となります。
一方、皮膚などに限局した髄外性形質細胞腫は外科切除により治ることも多いのですが、形質細胞腫が肝臓に限局して大きなしこりを形成するタイプは調べる限り報告がなく、その予後は不明です。
今のところ多発性骨髄腫に随伴する高グロブリン血症や、それに起因する高カルシウム血症や腎不全、血球減少症、出血傾向などは認められません。
そこで皮膚などの髄外性形質細胞腫と同様に、術後化学療法は行わずに経過観察としました。

今回は、血液検査で貧血に気付いたことから腫瘍の発見に結びつきました。
軽度の貧血だったため、定期的に血液をチェックしていないとその変化に気付かなかったかもしれません。
また、健康診断にレントゲンやエコーなどの画像検査を組み込む必要性も実感しました。

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2019年3月19日 火曜日

血小板減少により鼻出血を認めた肝臓脾臓型リンパ腫の犬

13歳のミニチュアダックスが急に元気がなくなり、嘔吐と食欲低下を主訴に来院しました。 
血液検査より肝パネルの増高と炎症マーカーであるCRPの上昇、血小板減少を認めました。
レントゲン検査では肝臓と脾臓の腫大を認め、

エコー検査では肝臓と脾臓実質の模様の変化を認めました。

下痢と食欲廃絶のため点滴治療を行いましたが、入院中に鼻出血を認め、血小板が少ないために止血に苦労しました。

第4病日の血液検査では黄疸と血液凝固異常を認めDICの状態となり、2次診療の予約を取りながらもDICの治療とステロイドの投与を開始しました。
ステロイドを投与した夜より少しずつ食べ始めました。第8病日、2次診療施設にて肝脾型リンパ腫の疑いであり、予後不良であると診断されました。
このタイプのリンパ腫は治療反応に乏しいことが多いが、まれに効果があることもあるとのことでした。
診断日より可能性にかけた化学療法を開始しました。黄疸と血液凝固異常は徐々に改善し、DICの状態は脱しつつありましたが、好中球数の増高と急な低下を繰り返し、血小板減少に加え貧血も発現しました。状態は安定しませんでしたが、調子に合わせて使えそうな抗がん剤を選択して治療を継続しました。
治療開始から1ヶ月後、ほぼ寛解の状態となり体調も安定してきました。

肝臓・脾臓の腫大もなくなりスッキリとした体型に戻りました。

治療開始から間もなく6ヶ月。まもなく化学療法卒業の予定です。
難治性タイプであることから、徐々に治療の間隔を空けていくこととしました。

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2018年12月11日 火曜日

犬のリンパ腫多剤併用化学療法 小豆ちゃん ウェルシュ・コーギー


小豆ちゃんは12歳になるウェルシュ・コーギー。
一昨日に左顎下に2.3cm大のしこりに気づき、来院しました。
その他に右の腰部には2ヶ月前に発見した2.7cm大のしこりがあり、こちらは増大傾向はありません。
細胞診を行うと、左下顎リンパ節からは中~大型のリンパ球を認め、リンパ腫を疑いました。
右腰部腫瘤からマクロファージなどを認め、こちらは悪性所見を認めませんでした。
各種検査より多中心型リンパ腫ステージⅠaと診断し、多剤併用化学療法を開始しました。

治療に良く反応し、抗がん剤の副反応もほとんど出さずに7ヶ月の化学療法を終了し、本日卒業といたしました。
花飾りを付けて記念撮影、パチリ。
今後は定期検診の体制に入ります。オーナー様と相談の上、パルス療法を継続することにしました。

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2017年8月26日 土曜日

リンパ腫に対する6か月間の化学療法を卒業した6歳のパグ     ペットのがん レオどうぶつ病院腫瘍科 横浜市青葉区


うめぼしちゃんは6歳、雄のパグ。1週間前に左あごの下に小豆台のしこりを見つけました。
昨夜、急速にしこりが増大して来院しました。
食欲はあるものの、いつもの元気はありません。

来院時、顔面は腫脹し、全身の体表リンパ節の腫大を認めました。最大の大きさの左下顎リンパ節はテニスボール大で、あご下の方に連なっていました。

リンパ節の細胞診では採取した細胞のほとんどが大型のリンパ芽球でした。最も腫脹していた左下顎リンパ節からは炎症細胞を認めました。
レントゲン検査では肝臓の腫大と腰下リンパ節群の腫脹を認めました。
血液検査では好中球増多とリンパ芽球を多数認めました。
これら所見を総合して多中心型リンパ腫ステージⅤbと診断し、化学療法(抗がん剤治療)を開始しました。

リンパ腫は血液系腫瘍であり、しこりがありますが外科手術は適応となりません。全身性疾患であるため化学療法(抗がん剤治療)が第一選択の治療となります。いくつかの抗がん剤を併用する多剤併用療法がおこなわれます。米国では各大学ごとにリンパ腫治療のプロトコールがあり、治療成績を競い合っています。その多くのプロトコールでは約半年間の治療を行います。基本的に使用する薬剤は同じですが使うタイミングなどがそれぞれ違います。当院ではそれらを加味して患動物のその時々の状態により治療を組み立てています。

うめぼしちゃんはリンパ腫に対する多剤併用療法の最も基本的なプロトコールであるCOP療法を行いました。多剤併用療法では副作用の異なる抗がん剤を併用することで、重度の副作用が出ないように分散しながら、リンパ腫に対しては色々な方向からやっつける、使いやすく効果的な治療法です。

治療当初に急速に腫瘍が縮み始めたことで一時具合が悪くなりました。これを急性腫瘍溶解症候群と呼んでいます。リンパ腫は小さくなっているのに、急速に壊れた腫瘍細胞の影響で調子が悪くなるのです。うめぼしちゃんは初回のビンクリスチン投与の翌日にリンパ節が急速に縮小したのに合わせて元気消失、食欲減退、嘔吐を認めました。点滴治療により元気が出て、食欲も戻りました。
その後の治療では体調を崩すこともなく、6か月間の治療を終了しました。

スッキリと小顔に戻ったうめぼしちゃん。
今後は定期検診体制でリンパ腫の再燃に備えます。

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2016年11月 7日 月曜日

猫の鼻が腫れた リンパ腫 レオどうぶつ病院腫瘍科 桂台 みたけ台 桜台


11歳雌の猫ちゃん鼻の腫れを主訴に来院しました。
2か月前より鼻炎の症状が始まり、抗生物質による副鼻腔炎の治療を行いましたが改善しません。
1か月前より
急速に鼻が腫れてきました。
鼻が詰まり匂いがしなくなったためか食欲も落ち、見る見るうちに体重も減ってヨロヨロしてきたとの事でした。



眉間にあるしこりはφ3x3x1.5㎝大で硬く、左眼は瞬膜が突出し、眼球が腫瘍に圧迫されて外側に変位していました。

年齢からも腫瘍性疾患を疑い、細胞診を行いましたが、有意な腫瘍細胞は採取されませんでした。

高齢猫の鼻に発生する腫瘍には癌が多く、難治性の鼻炎症状から始まり、腫脹による顔面の変形が見られます。
積極的な外科療法は出血などで亡くなるリスクが高く、効率に再発します。放射線照射はある程度の効果が報告されていますが、治療の難しい腫瘍です。

鼻の癌と似たような症状と顔面の変形の見られる腫瘍に鼻にできるリンパ腫があります。急速に増大した経過からはリンパ腫の可能性も疑われます。
リンパ腫は血液系腫瘍で通常はリンパ節などのリンパ組織などに病変が認められますが、節外型リンパ腫として鼻に発生するタイプがあります。
リンパ腫であった場合には治療は外科切除ではなく、放射線療法や化学療法が効く可能性があり、他の癌とは治療法が大きく異なります。

オーナーさんは放射線療法は希望されません。リンパ腫であるかもしれないという可能性に賭けて、L-アスパラギナーゼによる診断的治療を行うこととしました。
この抗がん剤は、リンパ腫には良く効きますが、その他の癌には全く効果がありません。

注射後、翌日より鼻のしこりの縮小が認められ6日後に来院した時には、元の顔に戻り、食欲も出てきたとの事でした。


治療の反応が認められたことより、鼻に発生した節外型リンパ腫と臨床診断し、治療を開始しました。





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