a.皮膚の腫瘍

2017年6月14日 水曜日

皮下嚢胞の複数回吸引処置後に腫瘍化した犬の1例        レオどうぶつ病院腫瘍科 横浜市 青葉区


11歳のゴールデンレトリーバー。
3年前より存在した腰背部のしこりが最近になりΦ4㎝大に急速増大しました。
エコー検査では内部には液体を貯留しており、貯留液の吸引処置により腫瘤は消失しました。
18㎖吸引された貯留液は薄い血様の漿液で、赤血球を認めたほかは悪性を疑う細胞は認めませんでした。
2か月後に再び吸引処置を行い、33㎖吸引しました。

その1か月後しこりはφ5㎝大に増大し、35㎖吸引した貯留液は茶褐色に濁りが見られました。
その後は徐々に貯留量は増大し、吸引頻度も増してきました。
7回目の吸引時には腫瘤内部にポリープ病変を認めました。

その後、腫瘤表面が自壊したため、QOLの改善を目的とした腫瘤摘出手術を行いました。

手術は嚢胞を傷つけないように、周囲の正常組織ごと完全切除しました。



術後、嚢胞を切開すると貯留液が排出し、内部に複数のポリープ病変を認めました。


病理検査では低悪性度の毛包上皮腫と診断されました。
術後は液体が貯留することもなく経過は良好です。

良性を疑う病変は慌てて手術をする必要はありませんが、繰り返しの液体貯留や腫瘤の自壊などにより生活の質が落ちる場合には外科切除の対象となります。今回は、術前には貯留液の性状の変化や内部構造の変化も認められました。おそらく慢性炎症に伴って腫瘍が発生したことが予想されます。

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2017年2月22日 水曜日

高齢犬の肘の座りダコ部に発生した悪性腫瘍  ペットのがん   青葉区 奈良 緑山 すみよし台 三輪緑山



16歳の雑種犬。右肘にできた座りダコを一週間前から舐めて自壊し出血していると来院しました。

右肘にφ2.6㎝大のしこりがあり、表面は潰瘍状に自壊していました。消毒をして包帯で舐めないようにガードして、抗生剤、消炎鎮痛剤等の内科治療を行いました。高齢なこともあり、オーナーは何とか内科的に維持したいと希望されました。

5日ほど内服を行うと、ひどい下痢になり、抗生剤を休止しました。右ひじのしこりはφ3.1㎝大に増大し、自壊は改善しませんでした。触診上は底部の肘関節部との固着はありません。増大傾向からはただの座りダコではなく悪性腫瘍の可能性もあります。また、内科的には改善せずに悪化傾向にありますので、この先、生活の質がさらに落ちていくことが予想されます。
そこで、高齢ではありますが、外科手術を検討することにしました。
術前の血液検査では明らかな異常は認められませんでした。肺にも転移を疑う所見はありません。
全身麻酔下にて肘の機能障害が出ない範囲でのしこりの除去を行いました。


術後は安静を指示しましたが、肘は動く部分なので創の離開や癒合不全の多い場所です。
肘まで覆う術後衣を作成し、抜糸までの期間を長く持つことで無事に癒合しました。


病理組織検査の結果は汗腺腺癌と診断されました。腫瘍の発生には年齢的な問題と座りダコができる肘への慢性的な刺激が関連しているのかもしれません。

術後2か月の健診では毛も生えてきて傷も分かりにくくなりました。再発は認めず肘の動きも良好です。

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2017年2月 7日 火曜日

犬の肛門周囲に発生した扁平上皮癌と肛門周囲腺腫        レオどうぶつ病院腫瘍科 青葉区 松風台 桂台 若草台


12歳齢、雄のペキニーズ。

4か月前に肛門左側に小さなしこりを発見しました。しこりは徐々に大きくなり本人も気にしてお尻をこするようになりました。
初診時、しこりの大きさはφ4.6×3.6×3.4㎝。
排便に時間がかかるとのことでしたが、直腸検査ではしこりによる直腸の圧迫はなく、腰窩リンパ節群の腫大はありません。しこりからの細胞診では細胞崩壊物が採取されました。
細胞診からは悪性の所見はありませんが、腫瘍の可能性は否定できません。しこりが悪性でなくても、このまま増大すれば自壊して生活の質が落ちることが予想されます。
そこで検査と治療を兼ねた切除生検手術をお勧めしました。
その後、しこりが自壊したため抗生剤による内科療法を行いました。
一時的に落ち着くものの自壊・排膿を繰り返し、いよいよ手術を検討しました。

初診より3か月、てんかんを疑う神経症状を観察しました。また、弁膜症を疑う心雑音も聴取しました。
しこりは自壊を繰り返しながらもφ2㎝大に縮小していました。そのしこりとは別に、肛門の周りに複数の肛門周囲腺腫を疑うしこりを新たに観察しました。
麻酔のリスクはあるものの、根本的な治療である手術に向けて心臓病の治療薬を開始しました。

初診より6か月、心臓病薬の投与により、横になってよく眠れるようになった。てんかんを疑う発作は観察されず、手術を行うこととしました。

手術は肛門左側のしこりの摘出を行いました。


散在する肛門周囲腺腫を疑うしこりに関しては去勢手術を行うこととしました。

術後、病理検査の結果は肛門左側のしこりは低悪性度の扁平上皮癌と診断されました。
また、精巣も腫瘍化しており、間細胞腫と診断されました。

その後、去勢手術の効果で肛門周囲に散在していた肛門周囲腺腫は縮小してきました。


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2017年1月20日 金曜日

悪性乳腺腫瘍の表層に肥満細胞腫が同時発生した犬の1例     レオどうぶつ病院腫瘍科 青葉区 鴨志田町 大場町 恩田町


11歳齢、雌のロングコートチワワ。昨夜、乳腺部のしこり見つけて来院しました。

腫瘤は右第5乳腺部皮下に存在し、皮膚や底部組織への固着は認めませんでした。
腫瘤はφ8×6㎜大で硬く、表層の皮膚には内出血斑がありましたが、気にして舐めているわけではなく、自壊もしていませんでした。

腫瘤の細胞診を行うとシート状に細胞集塊が採取され、存在部位から乳腺腫瘍を疑いました。
触診上、鼠径リンパ節の腫脹はなく、胸部X線検査で肺転移を疑う所見はありません。

T1N0M0 ステージⅠの乳腺腫瘍疑いと診断しました。

身体検査ではLevine6/6の心雑音を聴取し、心エコー検査で僧帽弁の逆流像を認めました。X線検査では心拡大に伴う気管の挙上を認めました。興奮時には常にチアノーゼを起こすとのことで、まずは僧帽弁閉鎖不全症の治療としてACE阻害剤の投薬を開始しました。

20日後の再診時、乳腺部腫瘤はわずかに増大しており、右の第3乳腺部にも5㎜大の小腫瘤を認めました。

重度心不全のために全身麻酔のリスクは高く、乳腺腫瘍に関しては経過を観察する選択肢を提示しました。
しかし、以前飼われていた犬を乳がんの肺転移で亡くしていた飼い主さんは、たとえ麻酔のリスクがあっても乳腺腫瘍の早期切除をご希望されました。

そこで、なるべく短時間で済ませるように乳腺部分切除術を行うこと、麻酔が安定していた場合には同時に卵巣切除術を計画しました。毎回の発情時に偽妊娠症状を示すとのことから、乳腺腫瘍の発生には性ホルモン分泌異常の関与が疑われました。

手術は心配した麻酔も安定しており、予定通り避妊手術まで行えました。

病理検査の結果
右第3乳腺部は良性腫瘍である乳腺腺腫。
右第5乳腺部は悪性乳腺混合腫瘍。
右第5乳腺部の表層の内出血部位は肥満細胞腫グレードⅠ-Ⅱと診断されました。

術後の経過は良好で、術後1年が過ぎた現在、再発や転移は認めず元気に過ごしています。

今回、乳腺腫瘍の表層の皮膚に肥満細胞腫が発生した珍しいケースですが、乳腺腫瘍と肥満細胞腫の発生に直接の関連があるという報告はありません。術前の細胞診では硬いしこりの部分に針を刺入したため乳腺腫瘍の細胞のみが採取されましたが、表層の内出血のある部分を吸引していたら肥満細胞腫が術前診断できていたかもしれません。肥満細胞腫と分かっていた場合には、もっと大きく切除することを検討したかもしれません。今回、短時間で小さな切除で済ませ、再発せずに済んだのはラッキーだったのかもしれません。

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2015年9月13日 日曜日

眼瞼腫瘍 組織球腫 ペットのがん 青葉区 麻生区

犬の上眼瞼に発生した腫瘍の切除とフラップ形成術

8歳のシェルティーの上まぶたにしこりが徐々に増大してきたと来院しました。
しこりは左上眼瞼にφ4×3.5×3㎜大で赤くドーム状に膨らんでいました。
細胞診を行うと、透明な細胞質を持つ円形細胞が多数採取され、組織球腫などを疑いました。
組織球腫は数か月の経過で増大し、やがて自然に退縮し消失することが多い良性腫瘍です。
そこでしばらく経過を観察することとしました。


約1か月半が経過し、しこりは徐々に増大してφ8×7×4㎜大となり、本人も気にして引っかいて傷つけてしまうようになりました。
再度、細胞診を行い病理検査センターに診断してもらった結果、形質細胞腫と診断されました。
形質細胞腫は組織球腫と同様に良性腫瘍ではありますが自然退縮はせず、増大し続けるために外科手術を行うこととしました。

発生部位が上眼瞼であることから拡大切除すれば目が閉じなくなるなどの機能障害が起こる可能性もあります。
そこで、瞼の機能を温存できるフラップ形成術を行うこととしました。

腫瘤は結膜側への固着はなく、眼瞼辺縁をわずかに残して切除できました。
作成したフラップ(皮弁)を矢印の方向に移動して欠損部をふさぎ、眼瞼辺縁と縫合しました。

手術翌日の退院時には術創周囲は腫脹していましたが、日毎に腫脹は軽減して2週間後の抜糸に来院したときには正常な眼瞼の機能が認められました。



術後の病理検査結果では、腫瘍は取り切れており組織球腫と診断されました。

細胞診では組織球腫と形質細胞腫の判別が難しい場合もあるようです。

術後の経過は良好で術後6か月現在、再発も認められません。

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