a.皮膚の腫瘍

2020年7月 7日 火曜日

雑誌「いぬのきもち」メラノーマ特集を監修しました

雑誌「いぬのきもち」の連載記事「犬の現代病ファイル」。8月号はメラノーマがテーマ。記事の監修をいたしました。

メラノーマは悪性黒色腫とも呼ばれるメラニン細胞のがんで、体中のどこにでも発生しますが、犬では口と皮膚と目が好発部位で、できる場所によって悪性度の違いなど特徴があります。

発生部位ごとの好発犬種を病理検査会社ノースラボの賀川先生に、データ提供いただきました。

悪性度の高いメラノーマが多く発生する部位には爪床部(爪の基部)や口腔内などが挙げられます。
中でも口腔メラノーマは気付きにくく、発見が遅れることが多いのです。
治療法は早期に発見できれば外科切除、周囲浸潤があったり切除の難しい部位では放射線療法が適応となります。
また、転移性の高い腫瘍でもあるため、それぞれの治療法に全身療法である化学療法(抗がん剤治療)の併用を考慮します。

腫瘍の拡大切除や放射線療法などは大学病院等の2次診療施設の受診が必要となるかもしれません。
いずれにしても早期に診断、治療までつなげるかが、治療の重要なポイントです。

各治療法のケースレポートも載せてありますので、ご参照ください。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

2019年8月 9日 金曜日

鼻鏡部に発生し扁平上皮癌を疑った犬の非腫瘍病変        レオどうぶつ病院 腫瘍科


犬や猫の鼻鏡部に発生する代表的な腫瘍に扁平上皮癌があります。

発生当初は色素脱や膨隆から始まり増大すると潰瘍状に自壊します。
治療は初期には積極的な外科療法が効果がありますが外貌の変化も伴います。
進行すると外科切除困難となり、自壊創からの出血などによりQOL(生活の質)が下がります。
放射線療法は緩和的効果であり、化学療法による縮小効果は望めません。

今回、鼻鏡部の扁平上皮癌を疑ったものの良性病変であり、自然消失した症例をご紹介します。

15歳の雑種犬。体重は27kgあります。高齢による前庭疾患と慢性腎臓病の経過観察中です。
2日前に普段は黒い鼻鏡部の一部が白っぽく脱色しているのに気付きました。

10日後、脱色部は徐々に増大してきました。
まずは化膿性病変の除外に抗生物質の投薬を開始しました。

抗生物質には反応せず、増大した腫瘤表面が自壊してきました。
扁平上皮癌など腫瘍も疑い細胞診を行いました。
細胞診では少数の細胞集団が採取されましたが、明らかな悪性所見は認められませんでした。
診断を進めるには大きな組織による生検が必要でした。

しかし、病変に気付いてから約1か月。しこりは縮小し始めました。

約2ヵ月後には色も元に戻りました。
オーナー曰く、草むらに鼻を突っ込んで蜂にでも刺されたのかもしれないとのことでした。
本当にそうだったのかもしれません。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

2019年7月15日 月曜日

犬の全身に多発する脂腺腫瘍 体表腫瘍 外科切除        レオどうぶつ病院 腫瘍科


13歳のアメリカンコッカースパニエル。8年前に左上唇部にφ4mm大のしこりを発見しました。
体表にはイボ様のしこりが多発しており、経過観察を行いました。
左上唇部のしこりは増大して自壊・出血を繰り返し、6年前と3年前に結紮処置を行ています。
結紮後しこりは脱落して、しばらくは落ち着いていますが、徐々に再増大してきます。

今回は2ヵ月前より増大により自壊し、出血を繰り返していまいた。
今回は増大速度も比較的速く、しこり表面の崩れ方も強く悪性腫瘍の可能性も疑われます。
しこりは今までになく大きくφ2.4×1.8×1.0cmとなっていましたが底部組織への固着は認めず、外科切除を検討しました。

同時に左腋窩部に増大してきたφ3.2×2.8×2.2cm大の皮膚腫瘤と、左頬部のφ1.0cm大の腫瘤、そして左上眼瞼の自壊・出血を繰り返す小腫瘤の切除を行いました。



病理組織検査の結果はいずれも脂腺組織に由来する腫瘍性病変であり、多中心性脂腺腫・脂腺上皮腫と診断されました。
腫瘍の転移性は極めて低いものの、再発が多く診られる腫瘍であり、経過観察が必要です。

術後、出血はなくなり、生活の質の向上が認められました。

術後5ヵ月、術創も分からなくなりました。
先日、14歳のお誕生日を迎えました。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

2017年6月14日 水曜日

皮下嚢胞の複数回吸引処置後に腫瘍化した犬の1例        レオどうぶつ病院腫瘍科 横浜市 青葉区


11歳のゴールデンレトリーバー。
3年前より存在した腰背部のしこりが最近になりΦ4㎝大に急速増大しました。
エコー検査では内部には液体を貯留しており、貯留液の吸引処置により腫瘤は消失しました。
18㎖吸引された貯留液は薄い血様の漿液で、赤血球を認めたほかは悪性を疑う細胞は認めませんでした。
2か月後に再び吸引処置を行い、33㎖吸引しました。

その1か月後しこりはφ5㎝大に増大し、35㎖吸引した貯留液は茶褐色に濁りが見られました。
その後は徐々に貯留量は増大し、吸引頻度も増してきました。
7回目の吸引時には腫瘤内部にポリープ病変を認めました。

その後、腫瘤表面が自壊したため、QOLの改善を目的とした腫瘤摘出手術を行いました。

手術は嚢胞を傷つけないように、周囲の正常組織ごと完全切除しました。



術後、嚢胞を切開すると貯留液が排出し、内部に複数のポリープ病変を認めました。


病理検査では低悪性度の毛包上皮腫と診断されました。
術後は液体が貯留することもなく経過は良好です。

良性を疑う病変は慌てて手術をする必要はありませんが、繰り返しの液体貯留や腫瘤の自壊などにより生活の質が落ちる場合には外科切除の対象となります。今回は、術前には貯留液の性状の変化や内部構造の変化も認められました。おそらく慢性炎症に伴って腫瘍が発生したことが予想されます。

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2017年2月22日 水曜日

高齢犬の肘の座りダコ部に発生した悪性腫瘍  ペットのがん   青葉区 奈良 緑山 すみよし台 三輪緑山



16歳の雑種犬。右肘にできた座りダコを一週間前から舐めて自壊し出血していると来院しました。

右肘にφ2.6㎝大のしこりがあり、表面は潰瘍状に自壊していました。消毒をして包帯で舐めないようにガードして、抗生剤、消炎鎮痛剤等の内科治療を行いました。高齢なこともあり、オーナーは何とか内科的に維持したいと希望されました。

5日ほど内服を行うと、ひどい下痢になり、抗生剤を休止しました。右ひじのしこりはφ3.1㎝大に増大し、自壊は改善しませんでした。触診上は底部の肘関節部との固着はありません。増大傾向からはただの座りダコではなく悪性腫瘍の可能性もあります。また、内科的には改善せずに悪化傾向にありますので、この先、生活の質がさらに落ちていくことが予想されます。
そこで、高齢ではありますが、外科手術を検討することにしました。
術前の血液検査では明らかな異常は認められませんでした。肺にも転移を疑う所見はありません。
全身麻酔下にて肘の機能障害が出ない範囲でのしこりの除去を行いました。


術後は安静を指示しましたが、肘は動く部分なので創の離開や癒合不全の多い場所です。
肘まで覆う術後衣を作成し、抜糸までの期間を長く持つことで無事に癒合しました。


病理組織検査の結果は汗腺腺癌と診断されました。腫瘍の発生には年齢的な問題と座りダコができる肘への慢性的な刺激が関連しているのかもしれません。

術後2か月の健診では毛も生えてきて傷も分かりにくくなりました。再発は認めず肘の動きも良好です。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

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