m.腫瘍外科

2019年3月11日 月曜日

犬の大きな眼瞼腫瘍切除と眼瞼フラップ形成術          マイボーム腺癌


マイボーム腺腫は高齢犬の眼瞼部に比較的良く発生し、切除により治癒します。小さなマイボーム腺腫でも根の部分を残すと再発してきますので、突出した部分だけでなく根部を含めたくさび状切除を行ったりします。切除した眼瞼の辺縁をぴったり合わせて縫合するとキレイに仕上がります。

眼瞼の1/3を超える大きさの腫瘤になると、切除後にそのまま寄せて合わせると引き連れが生じて、眼の形が変形してしまいますので、眼瞼フラップ形成術を行うことがあります。


12歳のラブラドール・レトリーバー。3年前より左上眼瞼に腫瘤認め、増大とともに自壊や出血をするようになりました。その他、全身の皮膚にも難治性の化膿病変があります。高齢であることから普段は眼軟膏を塗ったりして対処して、増大出血した際には眼瞼突出部分の凝固や結紮処置を行いましたが、いったん突出部が取れても数ヶ月すると再び生えてくるのを繰り返しました。今回はかなり増大し、出血も止まりにくく腫瘤が悪性化している可能性も疑われます。高齢ではありますが手術を検討しました。

左上眼瞼の腫瘤は眼瞼縁周の1/3以上。眼瞼フラップ形成術を計画しました。

上眼瞼をめくると腫瘤の基部は裏側まで入り込んでいますので、表面の切除では取り切れません。

術前に切開予定線をマーキング。

眼瞼の腫瘤を切除し、皮弁(フラップ)を形成し、縫合しました。
上眼瞼の1/3以上切除しましたが、目は小さくならずに済みました。

同時に右肘に増大した皮膚腫瘤を切除しました。
術後の病理検査では、眼瞼腫瘤はマイボーム腺癌(悪性)、肘の腫瘤は血管腫(良性)と診断されました。

術後1ヶ月の様子。出血はなくなり、眼の形も良好です。
先日、13歳の誕生日を迎え、元気に過ごしています。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

2019年1月13日 日曜日

歯肉に発生したエプリスを切除した犬の2例  口腔腫瘍     エプリス 口唇粘膜フラップ形成術


10歳齢、雌のウェルシュ・コーギー。2年前より歯周炎があり、デンタルガムや口腔のサプリメントを使用しています。1年半前に歯周病が悪化して、麻酔下でのスケーリングと動揺歯の抜歯を行いました。その後、しばらく落ち着いていたものの、1年前より口周りを触ると怒るようになりました。

左下顎第4前臼歯抜歯外側の歯肉に炎症が認められ、抗生物質や口腔のサプリメントなどを与えていましたが徐々に進行し潰瘍病変を形成しました。
潰瘍病変は徐々に増大し腫瘤形成をしたため、口腔内悪性腫瘍も疑い切除手術を計画しました。
術前検査では肺転移や明らかな骨溶解は認めず、まずは切開生検を行いました。

病理組織検査の結果はセメント質形成性エプリスと診断されました。これは慢性炎症を原因に発生したことが予想され、腫瘤底部の臼歯に歯根端膿瘍が存在することを疑いました。
後日改めて手術を行いました。
まずは、エプリス底部の右下顎第4前臼歯抜歯をしました。

次に表層のエプリス本体を切除しました。腫瘤底部の歯槽骨を掻爬して、歯根端膿瘍部の洗浄を行いました。

最後に腫瘤切除による歯肉欠損部の口唇粘膜フラップ形成術を行いました。

病理組織検査の結果はセメント質形成性エプリスと歯根部に慢性炎症の所見が認められました。
術後は徐々に痛みが和らぎ、口を触らせるようになりました。
今では以前のようにボールを咥えたりしています。


4歳齢、雄のラブラドール・レトリーバー。1週間前に歯磨きの際に歯肉のしこりに気づいて来院しました。

腫瘤はφ11×11×5mmで、左上顎第3前臼歯外側の歯肉から発生しています。歯周炎もなく歯はキレイです。
木の枝や布製のおもちゃなどを良くかじっており、左下顎の犬歯先端は破砕しており、歯肉腫瘤と接触している部位は一部自壊しています。
切除生検をお勧めしましたが、臨床症状はなく、いったん経過を観察することになりました。

3ヶ月後、しこりはφ1.4×1.4×0.6mmに増大し、手術をすることになりました。

口腔腫瘍の可能性がありますのが、術前検査では明らかな転移所見や局所の骨浸潤ははありません。
そこで悪性ならばT1N0M0ステージⅠの口腔腫瘍として外科切除を計画しました。

しこりの底部の歯に動揺所見はなく温存し、肉眼上正常な歯肉部にて切除し、歯肉欠損部に口唇粘膜フラップ形成術を行いました。
術後はエリザベスカラーを装着し、しばらくはふやかしたフードを与えることとしました。

病理検査の結果は骨形成性エプリスと診断されました。
術後、エリザベスカラーを外している時にこすったのか、歯肉縫合部は離解しましたが、再生してきた歯肉で置換されました。


投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

2018年7月 1日 日曜日

肛門周囲のしこりの増大と出血により手術を行った15歳齢の柴犬

15歳齢、未去勢雄の柴犬。肛門の左上部に発生したしこりが徐々に増大してきました。

高齢の雄犬には肛門周囲腺腫がよく発生します。良性腫瘍ですが、増大すると自壊や出血、感染などが問題となります。
ホルモンの影響で発生しますので、治療にはしこりの切除に加えて去勢手術を行います。

今回は15歳というかなりの高齢犬であるため、麻酔のリスクなどから手術は行わず経過を観察していましたが、徐々に増大し、自壊出血を繰り返しました。対症療法で維持していましたが、何度も気にして舐めかじることで出血し、生活の質が落ちていることと、高齢犬ではあるが元気であることから飼い主さんは手術を希望されました。

自壊したしこりは5cm大に増大していたものの基部はくびれがあり、肛門括約筋との固着は軽度であり、肛門の機能を温存して切除することができました。


同時に去勢手術も素早く行いました。麻酔時間を短く済ませたことで麻酔の覚醒も良好で無事退院できました。

術後の病理検査結果は肛門周囲腺癌でした。両側の精巣も間細胞腫が認められました。
いずれの腫瘍も完全切除することができました。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

2017年6月14日 水曜日

皮下嚢胞の複数回吸引処置後に腫瘍化した犬の1例        レオどうぶつ病院腫瘍科 横浜市 青葉区


11歳のゴールデンレトリーバー。
3年前より存在した腰背部のしこりが最近になりΦ4㎝大に急速増大しました。
エコー検査では内部には液体を貯留しており、貯留液の吸引処置により腫瘤は消失しました。
18㎖吸引された貯留液は薄い血様の漿液で、赤血球を認めたほかは悪性を疑う細胞は認めませんでした。
2か月後に再び吸引処置を行い、33㎖吸引しました。

その1か月後しこりはφ5㎝大に増大し、35㎖吸引した貯留液は茶褐色に濁りが見られました。
その後は徐々に貯留量は増大し、吸引頻度も増してきました。
7回目の吸引時には腫瘤内部にポリープ病変を認めました。

その後、腫瘤表面が自壊したため、QOLの改善を目的とした腫瘤摘出手術を行いました。

手術は嚢胞を傷つけないように、周囲の正常組織ごと完全切除しました。



術後、嚢胞を切開すると貯留液が排出し、内部に複数のポリープ病変を認めました。


病理検査では低悪性度の毛包上皮腫と診断されました。
術後は液体が貯留することもなく経過は良好です。

良性を疑う病変は慌てて手術をする必要はありませんが、繰り返しの液体貯留や腫瘤の自壊などにより生活の質が落ちる場合には外科切除の対象となります。今回は、術前には貯留液の性状の変化や内部構造の変化も認められました。おそらく慢性炎症に伴って腫瘍が発生したことが予想されます。

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2017年4月 5日 水曜日

犬の脾臓巨大腫瘤破裂の緊急摘出術 レオどうぶつ病院腫瘍科   若草台 桂台 たちばな台 桜台 


9歳齢雄のビーグルが昨夜から元気も食欲もなく、震えていると来院しました。
診察では腰を丸めた姿勢で腹部に圧痛を認めました。
約一年前に急性膵炎となり、以来低脂肪食の食事療法を継続していました。
血液検査を行うと膵酵素のリパーゼと炎症の指標であるCRPの著増を認めました。
急性膵炎の再発を疑い、点滴治療を開始し、痛み緩和にフェンタニルパッチを貼って強力な鎮痛を行ないました。

翌日、レントゲン検査により腹腔内巨大腫瘤の存在を確認しました。
腫瘤はφ14×11×10㎝で腸管を背側、左側に圧迫し脾臓の腫瘤を疑いました。


超音波検査では脾臓腫瘤の周囲に液体貯留を認め、腫瘤からの腹腔内出血を疑いました。
昨日35%だった血液の濃度が26%となっており、持続的な出血により数日内に出血死することが予想され、緊急手術を行ないました。




術前の様子。腹部が腫脹しているのは太っているからではなかったのです。


摘出した脾臓。水色の線の部分に大きなしこりが発生しており、破裂して持続的に出血していました。
巨大なしこりはもろい組織で、摘出の際にちぎれて更なる出血が予想されたために、先に脾臓への血流を遮断してから摘出を行ないました。


脾臓辺縁から発生していたしこりは500gでした。
表面には腹膜組織が癒着し、出血を繰り返していたことが予想されました。

その後、貧血の改善と共に元気を取り戻しました。
リパーゼやCRPも正常化し、脾臓腫瘤破裂による二次的な膵炎であったことが予想されました。
病理検査の結果は過形成性結節であり、良性病変であったために完治しました。

本当はこんなにスマートだったのですね。

脾臓に発生するしこりには血管肉腫など非常に悪性度の高い腫瘍が多いのですが、良性病変であってもこのように大きなしこりを形成し、破裂して腹腔内出血をすることで命を落とす危険があります。また、術前にはそのしこりが血管肉腫などの悪性腫瘍なのか、今回のような良性病変であるかは画像では判別できません。

投稿者 レオどうぶつ病院 | 記事URL

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