レオどうぶつ病院 診療日記

2015年2月 6日 金曜日

重度歯周病に伴い歯肉腫の発生した犬の歯牙処置

11歳齢、雄のウェルシュ・コーギー。重度の歯周病があります。
自宅では口に触ろうとすると噛まれるため、歯磨き等はできません。
グルーミング時などに歯磨きの処置等を行っていましたが、歯周病の悪化と共に歯肉にしこりが発生しました。
これまで麻酔のリスクから口腔内の処置を避けてきましたが、血液検査を行うと大きな異常はなく、全身麻酔下での歯牙処置と腫瘤の切除生検を希望されました。

麻酔導入後の口腔内の様子です。
重度の歯石の沈着と歯周炎が認められました。
露出した歯根部や歯周ポケットには歯垢と被毛が蓄積しており、除去していきました。
左側下顎の歯肉部に突出するしこりが確認できます。

開口すると歯肉のしこりは左側下顎第3前臼歯の外側面に存在していました。

超音波スケーラーにて歯石を除去し、同時に動揺歯の抜歯を行いました。

歯肉のしこりを精査すると基部にはくびれがあり、歯肉外側面より発生していることが分かりました。

レーザーメスを使い、しこりの切除を行いました。
切除と同時に止血も行われるので出血はありません。

切除後の外貌の変化はありませんでした。

切除したしこりは病理組織検査に送り、後日、線維性エプリスと診断されました。
線維性エプリスは慢性炎症や特発性に発生する非腫瘍性の歯肉腫瘤病変です。
本例では慢性の歯周炎が原因となっている可能性が考えられました。

歯周病は慢性刺激による歯肉腫や口腔内悪性腫瘍の発生要因になりえます。
また、蓄積した歯石や歯垢内の歯周病菌からの細菌毒素により、腎臓や肝臓、心臓に悪影響を及ぼします。
今後の継続的なデンタルケアの必要性をご説明しました。

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